はもブログ

まだジャンプを見分けられないまだ国旗も持ってないスケオタになりきれない永遠の初心者はもによる、ただただ羽生結弦さんへの愛を叫ぶ、羽生結弦さん試合観戦記※ほぼお茶の間たまに現地

世界選手権2021私感

ああ、あなたはこの境地に立って尚、そんな顔をするんですね。

悔しさが露わになった顔。
一瞬ではあったけど確かにそこにあった。



世界選手権2021  inストックホルム


開催地スウェーデンの現状を考えれば中止でもおかしくはなかったが、無観客・バブル方式という形で実施された今大会。

羽生くんは、このコロナ禍で自分が参戦することに迷い、出発直前の地震によってさらに気持ちが惑いスケジュールも変更を余儀なくされながら現地に降り立った。
北京オリンピックの枠取りに全日本王者として最大限貢献することを一番の目標に。


つくづく思う。
羽生結弦という人は、今やとてつもなく大きくなった「羽生結弦」という存在から逃げずに、覚悟と責任を持って正面から引き受け、生きること自体で羽生結弦の存在を問い続けていると。



心身ともにギリギリの状態だったかもしれないが、公式練習、ショート、公式練習でのフリー通しと、好調さを維持しているように見えた。
が、フリー本番直前になって様子が変わった。
いつもの羽生くんではないことは、誰の目にも明らかだったと思う。
それでも、どれほど本調子ではなくてもジャンプは転倒も回転不足もなく、スピンもステップもレベル4を揃えた。

「細かいミスで抑えられたのは自力が上がったと思っている」と羽生くんが言った通りの演技を見せてくれた。

羽生くん、表彰台おめでとう。
3枠獲得、本当にありがとう。

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(ゲッティさんお写真より。この左手が可愛すぎてだな…)




ジュニアでも頂点に立ち、シニアデビューからは10年を超え、怪我や病気がありながらも休むことなく戦い続け、何度も何度もオーサーが言うところの“マジカルモーメント”を起こし頂点に立ち続けてきた。

その羽生くんがまだ「満足させてもらえなかった」と言う。
「アクセル込みのプログラムの完成形を見せないとダメだと言われたような気がしている」と言う。
「それが今モチベーションになっている」と言う。

まだ自らは成長の途上にあると言っている。


4回転アクセルをモチベーション、と言うモチベーションは何なのだろうと思う。

全てを手にしてきたように見える羽生くんを、それでもまだ高い壁に向かわせるもの。

考えて考えて、たどり着く答えはやはり、とてもシンプルだ。
それは、スケートへの愛ではないだろうか。
自分を表現できるスケート、自分を成長させてくれるスケートへの、愛。
スケートを通して繋がることができた人たちへの、愛。
何より、スケートを好きだと思う純粋な気持ち。

凄い人だ。
自分の“好き”を極限まで磨き上げることのできる強さ。

だから思う。夢を叶えてほしいと。

都築先生は仰った。
「これだけスケートを愛している人間は他にいません。彼に成功させてあげたい気持ちがあります」と。




4回転アクセルはモチベーション、では羽生くんにとって勝つこととは?
平昌後の羽生くんが、自らの理想とするスケートと実際に付けられる点数との乖離に苦しんだことは容易に想像がつく。そこからジャッジへの諦め、勝ち負けにはこだわらないというような達観の域にあることも。

(技術と芸術の高難度での融合という、おそらくはフィギュアスケートの目指すべき姿を見せてくれている選手にそう思わせてしまうジャッジ、ISUの罪は重い。
彼らはフィギュアスケートをどうしたいのだろうか。
羽生結弦が競技者でいてくれる間に羽生結弦の全てを学ぶには、あまり多くの時間は残されていない、ということを彼らには言いたい。)


だが私はどうしても、フリー演技後のキスクラで一瞬見せた、あの悔しさが満ちた顔をなかったことにすることはできない。達観とは程遠い“人間羽生結弦”が溢れ出した顔。
その悔しさが負けたことへの悔しさか、思う演技ができなかった自分への悔しさか、そのどっちもか、或いはまた別の悔しさかはわからないけれど。
今大会“枠取り”を一番の目標にしていた羽生くんには、ひょっとしたら羽生くん自身思ってもいなかった感情だったかもしれない。

勝ち続ける羽生くんだから、強い羽生くんだから好きになったわけではない。勝つことが至上とも思っていない。勝っても負けても羽生くんが大好きだ。

ただ。羽生くん自身のために。羽生結弦という存在は羽生結弦のためにあるのだから。
あの表情が一瞬のものだったとはいえ、一瞬でもある限り、私はこれからも、4回転アクセルの成功と共に羽生くんの勝利も願っていこうと思う。

4回転アクセル込みのプログラムが完成した時、それは間違いなく「勝ちつつ価値のある」瞬間になると信じている。


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