はもブログ

まだジャンプを見分けられないまだ国旗も持ってないスケオタになりきれない永遠の初心者はもによる、ただただ羽生結弦さんへの愛を叫ぶ、羽生結弦さん試合観戦記※ほぼお茶の間たまに現地

国別対抗戦2021私感

「今ここに立てて言葉を発してこうやってスケートができることが嬉しく思いますし、何よりも、やっぱりスケートを滑ることこそが僕がここにいる生きている意味なのかなって感じるくらい本当に幸せでした。
一生懸命どんな状況でもがんばっていきたいと思います。」

一年前は、あんな形で突然シーズンが終わるとは思っていなかったし、一年後もまだ困難な状況が続いているとは思いもしなかったけれど、
北京五輪を前にした今シーズンの最後にこんな言葉を聞けるとも思っていなかった。



国別対抗戦2021。

思えば最初はホワホワしていた。
花試合って聞いてたし、皆被り物してフォーフォー♪してるイメージだったし、羽生くんは『餃子イチゴプリン』とか言うし。
“好きな食べ物”に『餃子とイチゴとプリン』とか言うオリンピックチャンピオンいる⁈しかも2連覇中のオリンピックチャンピオンよ⁈
いないでしょ、いないいない。そうそういてもらっては世の中の道理が通りません。


国別対抗戦HPにある出場選手紹介。
このアンケート、まさか紙で提出してないだろうが、羽生くんにはアンケート用紙に手書きで書いてほしいという謎の願望がある。
何かを書く時の小首を傾げるあの姿勢で(左傾きか?)「んっと、、」って言いながら、『餃子とイチゴとプリン』って書いてほしい。
でそれを見て、“苺”じゃないの何かわかる、でも“いちご”じゃなくて“イチゴ”なんだ、それはちょっと意外♪って秘密の(?)発見をしたい。

…てな具合にホワホワしていたんだ。

していたんだけども。
同じ選手紹介ページに「憧れの選手:内村航平選手」を見て、
その後放送されたインタビューを見て、
ホワホワは一旦お預けになった。

内村航平、そう、体操界のレジェンド内村航平
言わずと知れた、羽生くんが公開私信を送り合ってきたあの内村さんだ。
(余談だが、内村⇄羽生の公開私信、「もうyou達早く対談しちゃいなよ」と誰もが思ってると思うwその方が色々と手っ取り早いw

なんだけど、公開私信っていうのもいいんですよね。本人が目の前にいないからこそ語れる本音があるのもまた事実というか。「すっごいプレッシャーも期待もかけますけど頑張ってくださいキラン✨」なんて対面ではなかなか言えない。いや羽生くんなら言えるかな?その本音から伝わってくる相手へのリスペクト、少しの照れ、はにかんだ笑顔、それが共に五輪二連覇中の現役アスリート、っていうのがね…終わりなき公開私信プライスレス)


羽生くんと同じ五輪二連覇中であり、30歳を超えてなお、体力気力の限界を超え高難度の技を習得して己の体操道を邁進し続けている内村さん。
H難度の大技ブレットシュナイダーへの挑戦を「人に勝つことじゃない。己との戦い」と語っていた。

競技は違えど、共鳴し合うもの。競技と言う枠を超えたもの。何を見せ何を表現し何を残すのか。フィギュアとか体操とかはあくまでもそのためのツールでしかないと言うような。

そして国別開催直前に放送されたインタビュー。
とても印象的だったのが「納得したい」と言う言葉だった。
「4Aを飛びたいっていう理由の根本は“納得したい”なんですよね。
胸を張って最高の羽生結弦と言うところにたどり着きたい。
最終目標に4Aを含めた完璧な形のプログラムそこを表現しないと自分自身納得できない」

“最高の羽生結弦”、おそらくそれは端から見れば今までに何度もあった、何度も。ニース、ソチ、2015NHK杯、ヘルシンキ、平昌etc。
2020全日本を見れば、今だって最高を更新している。
そんな羽生結弦が自分で自分に納得したいんだというのが、とんでもない才能にとんでもなく強い意志を宿しとんでもない高みに到達した人が到達した先に見る景色なのかもしれないと思った。
穏やかな顔と声で語ってくれたけど、その景色は穏やかとは程遠いんだろう。轟々と風が吹き荒れているのか、炎が燃え盛っているのか、しんと静まり返っているのか。
羽生くんにしかわからないけれど、そこでもきっと下を向いてはいないのだろう。笑っているような気さえする。

そう思ったのが、フリーの翌日エキシビションの練習で見せた4Aチャレンジ。
着氷とはならなかったものの本人が言う“あと8分の1”を確かに見せてくれた。
その姿はがむしゃらだった。
ソチオリンピック前まだ仙台で練習していた頃の映像で見た、何度も何度もジャンプを飛んでどれだけ失敗して氷に叩きつけられても何度も何度も立ち上がっていたあの頃のようながむしゃらさ。
4Aラストトライに向かう羽生くんは久しく見せなかった猛禽類のように鋭い目をしていた。
右手が何かを掴もうとするかのようだった。
いやあの右手には実際に何かが握られていたのかもしれない。羽生君にしか見えない何か。掴めそうな何かが。
その右手に、続けてジャンプの軌道の方向に鋭い視線を向け右手を下ろした次の瞬間、羽生くんは笑った。

ああ、この人はどんなに達観しようとやっぱり下を向いてなんかいない。

達観はしているのかもしれない。ISUにはそこん所をよくよく考えていただきたい。
それでも自分自身が胸を張ってこれが最高の羽生結弦と言える演技をするために、前を向き戦い抜こうとしている。
羽生くんが今季『天と地と』にたどり着いたのは必然だったのだと思った。

平昌で連覇を達成した後モチベーションは4Aだけと言っていたように、すぐにでも4Aの練習に取り掛かりたかっただろう。

しかし、2018〜19は怪我をし、2019〜20はフル参戦で、4Aにトライする時間がなかった。
それがこのシーズン奇しくもコロナ禍でじっくり集中してチャレンジできる時間がうまれた。
コロナ禍のこの1年が良かったはずはない。
失ったものもきっとある。
カナダにも帰れず1人での練習、様々なことを考え試合にも出れなかった今季前半。
苦しくきつかったはずだ。崩れ落ちそうになった。
それでも、そのきつい時間にとことん向き合い1人格闘してきたんだろう。
その姿があの4Aチャレンジだったのだと思う。

(そんなエキシビション練習後、コリャダくんとのグータッチは今大会個人的ハイライトの一つだった。)


翌日エキシビション。私は大阪に向かった。
新幹線で前の席にContinuesのトートバッグが見えた。人見知りの私はもちろん声をかけるかことなどできずに、ただ、手首に掛けた悲愴シュシュを見えるようにするのが精一杯だった。(気付いてほしかったらしい)

何ということか、会場のドアを開ければそこに羽生くん。エキシビション練習中。
「え…細…」
ワールドでのブランニュームキムキ羽生くんが記憶に新しかっただけに、まずそう思った。
胸筋は胸筋っ!、尻は尻っ!、太ももは太ももっ!、としてるけどいや細いやん。
決して体調は良くはなかったとのこと。
ワールドで見たあのバンプアップされた体は、体調が良く4Aの練習が積めていた証なんだなと。4Aの難しさたるや、いやもう、お願いしますよ。



『花は咲く』曲かけ練習。
もちろん他のスケーターさんも滑ってるのだけど、皆がリンク端にいて(たまたまか皆も見ようとしたのかはわからないけど)リンクには羽生くん一人、みたいな瞬間が一瞬あった。
それは短い時間だったけど、その一瞬が永遠かのような、空気がぎゅっと濃くなったのを感じた。練習でさえ、羽生結弦は空気を変える。そこには羽生結弦の世界がある。練習の一つ一つにも魂を込める羽生くんだからこそ。

そして、観客席へバンビのように軽やかな挨拶をして羽生くんは練習を終えた。



エキシビション本番『花は咲く』。

ワールドのそれより一層情感たっぷりに音のひとつひとつを色濃く同時にどこまでも柔らかく表現していた。
曲が転調しオケが入る前のスピンは、瑞々しい芽吹きからパッと開き凛と咲くに至る花のようで、
指田さんの歌う「花は、花は、花は咲く」の歌詞と相まってため息が出る美しさだった。

常々音楽を表現したいと言い、そこから何をどう受け取るかは受け手に委ねると語る羽生くんならではの演技であったと思う。

震災からの月日を思ったり、コロナ禍での月日を思ったり、自分の背景を重ね合わせたり、
この演技を見た人それぞれの思いがあり、それぞれがまた前を向いて進んでいく。
その中心に羽生くんがいる。

今季の最後に見せてくれた演技は、光、そのものだった。


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この光の一粒になれて幸せでした…これだけの数のスマホライトが一つも揺れていなかった。
羽生くんが作り出す世界観に、その空間にもともとあったかのように。
特別なのに自然で静か。
夢のような時間でした。


そして冒頭に記した言葉。
あの言葉が聞けて幸せでした。



最後に…
日本代表フィギュアスケート部、最高でした!
この困難なシーズンに今出せる全てを見せてくれた全ての選手達に感謝を。


そしてそして…
羽生くん、今季もお疲れ様でした。葛藤の中、試合に出てくれて、羽生くんのスケートを見せてくれて、ありがとうございました。
国別ショートでの耐えながらも観る人をエンターテインさせてくれた3Aも、フリーでの無重力This is 羽生結弦な3Aも、エキシビションでの練習では苦戦していたけれど本番でしっかり決める本番力発揮の3Aも、全てがきっと来季に繋がる。
納得の笑顔がきっと待ってる。

どうか、どうか健康で。