MOI2019私感
メダリスト・オン・アイス2019
昨日のSEIMEIは奇跡のようだった。
私は平昌オリンピック前からそろりそろりと羽生沼に無意識に引き寄せられて、本番のバラ1で「ここが…羽生沼…!」とそれまでに見たことのない新世界の淵にたどり着き、「さあ、どうぞ」とその新世界への扉をすっと開けてくれたのがSEIMEI様だったわけだが、まさかSEIMEI様に謁見できるとは思っていなかった。
羽生くんはとても緊張していたそうだが、だからか、凄まじくきんきんに研ぎ澄まされた集中力が演技に見事に昇華されていた。
スタートポーズから感じさせる体のキレ、羽生の体から音が鳴ってないか…?と思わせる音楽の表現、競技では見られないムーブ(小さなホップとかバッククロスとか3Aの長く残したフリーレッグなど。素人だからよくわかってないけど)、しゃなり感も艶を増し、ショートバージョンとはいえ、おいおい平昌を超えてきてないか…?と動揺さえさせるものだった。
羽生くんから観客へのクリスマスプレゼントということだったが、クリスマスどころか正月まで一気にやってきた感。
SEIMEI様のお辞儀もあなかっこよく、
え…?私、こんなにSEIMEI好きだったっけ…?たしか強火のバラ1党だったはず…と自分で自分に困惑も。
何が凄いってこれがエキシビションということじゃないですか。
パリ散、春こい、スワン、SEIMEI様、と今期見せてくれている訳ですが、どれも意味がある。
毎回あれかなーこれかなーと想像するも当たった試しはなく、でも毎回不思議と、あぁそれしかないよねぇとストンと落ち着く意味が。
特にパリ散・SEIMEIはリベンジの意味も込めた伏線回収も素晴らしく。
「思い出を汚したくない」という言葉を聞くと、競技とはまた違うが、ある意味では競技以上の準備を必要としていると思われる。
通常なら一年こなすうちに段々とこなれていくものを、ここ一発で最高のものを見せるんだという気概。
人の何倍ものエネルギーを要するだろう。
そりゃあ消耗も激しいというもの。
でも、だから大好きなんです。
不器用だけど、とことん真っ直ぐな羽生くんが。
勝ち負けでは確かに負けがついた全日本。
悔しくて悔しくてたまらなかったはず。
心に追いつかなかった体に困惑し、それもまた悔しくて悔しくてたまらなかったはず。
根っこの性格なんてそうそう変わるもんじゃない。
それでも必死に涙を胸にのみこんだ。
今の自分の置かれた立場、自分がこうあるべきと思う姿を見せてくれた。
これこそ、王者の品格。
ズビズビと涙するファン(私)に「こんなもんじゃ終わらない」と背中を押して前を向かせてくれた。
幼い頃からの仲間と自らの後を追いかける後輩達との笑顔をたくさん見せてくれた。
そして、昨日のSEIMEI。
ありがとう、しか言葉がない。
私は本来、アスリートに「ありがとう」というのが好きではない。
感動をありがとうとか勇気をありがとうとか。
大河ドラマ『いだてん』に東京オリンピックで金メダルを取った元選手が出て、こんな事を言っていた。
勝ってよかったねってみんな喜んでくれているけど、
あんた達のためやない、自分のためやって、自分にはそう言い聞かせていた。と。
これだと思うんだよな。これなんだよ。
血の滲む努力を人のためにやれるのか、と。
自分のためにやるんだろうと。
私達はその姿に勝手に心打たれてるだけで、アスリート本人は、そんな私達のことは頭に入れてくれなくていい。自分だけに集中してほしい。
私達からアスリートへの一方通行でいいと思っている。
それが「ありがとう」と言ってしまうと、双方通行を求めているような気がしてしまうのである。
血の滲む努力の他に背負わなくていい荷物を背負わせてしまうような気が。
だから、アスリートに「ありがとう」というのは好きではない。
なのに、羽生くんには「ありがとう」しか出てこない。
何故かはわかっている。
さっきも言った沢山のものを、羽生くんが私達に見せてくれるからだ。
あの(逞しくなったけど)華奢な体からは想像もつかない熱量の想いを惜しみなく与えてくれるからだ。
あのくしゃくしゃの笑顔で「ほら!受け取れ!」と言ってくれているからだ。
ああ、受け取っていいんだ、と思わせてくれるからだ。
だから、出てくる言葉はやっぱり「ありがとう」でいいんだろう。
ありがとう、羽生くん。
全日本は、疲労が蓄積されてようが調子がどうだろうが、それでも証明しなければならないものがある、と孤高の戦いに挑む戦士のようだった。
かっこよかった、羽生くん。
だからこそ、何周回ってるかわからないけど、今度こそどうか自分のために。
私達のことはほっといて、あなた自身、羽生結弦のために突き進んでください。
私達は平気です、ほっとかれるのも嫌いじゃないですから。
四大陸、そして世界選手権に向けて、
いざ!限界突破!負けんな、羽生くん!
(さすがにまずはしっかり休んでくださいね!)